第1回「味噌ものがたり大賞」受賞者発表!!
優秀賞竹腰まさこ 様
ざらりとした食感、それが母のみそ汁。味ではなく思い出すのは舌ざわり。その犯人は、こし器を使わなかったせいのみそかすであったり、とり出さないままのいりこのなれの果て。きっと手間を省いたせいだと思っていた。「体にいいんだから」母はいつもそう言った。具はわかめと豆腐でみそ汁も緑がかっていた。毎夜コンロにかけてある鍋には翌朝のみそ汁のためのいりこが浮いていた。それが母のルーティンであり愛情だったのだ。何も飾ることなく毎朝一杯のみそ汁を出し続けること。そして今も聞こえてくる「おみそには大豆がたくさん入っていてみそかすだって体にいいし捨てるなんてもったいない、いりこもそうよ。」ずっとずっとただの言い訳だと思っていたけれど今ならわかる。あの舌ざわりの中には、美味しさより、健康でいてほしいという母の願いがあった。かなうなら、もう一度あのみそ汁のざらりを味わい、ありがとうと言いたい。かなうなら・・・。
審査員長 松浦弥太郎の評
とても心温まるエッセイですね。このお味噌汁から伝わるお母様の愛情や、健康を思う気持ちがとても印象的です。みそかすやいりこが残る舌触りさえも、日常の中にある母の深い思いやりの象徴なのでしょう。