第1回「味噌ものがたり大賞」受賞者発表!!

優秀賞杉井智子 様

「切迫早産で入院することになってしまった」。二人目の子どもを妊娠中だった娘から突然連絡が来た。上の子はまだ二歳。孫の世話や家事を手伝うために、私が仕事を辞めて娘の家で暮らすことになった。七か月後、無事男の子が生まれ、私は自宅に戻った。
動き回る孫に怪我をさせないようにと気をはっていたのだろう、自宅に帰ってから、しばらく何もできない状態になってしまった。
そんな時だった。朝起きると、夫がお味噌汁を作ってくれていた。一口飲んで、心の中に日常が戻ってきた。具はきのこと野菜。一緒に市役所の健康チャレンジに参加した時に学んだもの。お味噌は一緒に長野に旅行に行った時に偶然入ったお店で見つけたもの。薬味のねぎは我が家の庭で採れたもの。小さなお椀の中に、日常の生活が入っていた。
お互いの母から受け継ぎ、夫婦二人で作ってきた私たちのお味噌汁。この温かい味が、私に普段の自分を取り戻させてくれた。

審査員長 松浦弥太郎の評

夫婦で受け継ぎ、作り上げた「我が家のお味噌汁」。その一杯が持つ力強さとおいしさは、何気ない日常の中に潜むほんとうの豊かさを教えてくれます。このお味噌汁こそが、二人の絆を象徴する特別な一杯であり、心に深く刻まれる瞬間を作り出すものだと感じさせてくれるすばらしいエッセイです。